やまいも横丁

そのまなざしに刺さりたい

髭男ライブに初参戦できた喜びと感動の記録~その3~

 
※この記事は、Official髭男dism Hall tour 19/20 "Hall Travelers" 、パシフィコ横浜公演について記した「髭男ライブに初参戦できた喜びと感動の記録~その2~ 」の続きです。注意書きなど含め、その1、2から続けて読んでいただければ幸いです。
その3の目次

 

 

ライブ本編④

FIRE GROUND

 ブラザーズでへろへろになっている場合ではない。今度は「FIRE GROUND」でパンクな髭男。NHKホールの映像では、曲がはじまる前に英語のセリフを楢﨑さんが一生懸命しゃべっていたが、今回はアンディが担当している。これまた憧れの「ウォイ!ウォイ!」に参加できて最高に楽しい。一般的に、男性4人グループの客層は女性が大多数を占める場合が多いと思うのだが、髭男は男性ファンも結構多い(が、やはり相対的に女性の方が多い。まあ、どうでもいいのだけど)。したがってこの「ウォイ!ウォイ!」も、なかなか野太く力強い。こんなに大声で「本能!」と叫ぶことは人生で他にないだろうと思うのだが、母音がオだからかなんなのか、これがかなり気持ちいい。「ん」が入るので節も付く。ライブはやっぱりこうでなくっちゃ、と思わされるグルーヴ感と一体感。間奏部分では、楢﨑さんの「うちのギターを聞けえ!!!」(ニュアンス)のシャウトに続いて大輔くんのパンクなギターソロ。中心のお立ち台でしゃがみ、伸ばしている片脚が実に長い。ロングジャケットも決まっていて、大変美しい。

ノーダウト

 勢いをそのままに「ノーダウト」。この辺りの畳みかけは凄まじく、思い返しても体感時間がとても短かった。FIRE GROUNDを経てなおさらに盛り上がり、この曲のポテンシャルの高さと、この曲が観客の間に深く浸透していることを実感させられる。ホーンセクションのアレンジがいかしている。ライヴ全体の盛り上がりのピークに近かったからだろうか、正直ノーダウトについての記憶が一番薄い。あくまで、盛り上がっていた証拠なのだが。


Stand By You

 盛り上がりはさらに続き、「Stand By You」の大合唱&大ハンドクラップへ。これも、はやくライブで参加してみたくてしょうがなかったので、始まった瞬間からグッとくる。
 この日のライブを振り返ったとき、私が一番衝撃を受けたのはこの曲だったと思う。とにかく、アレンジがとんでもないことになっていた。残念ながら、私の音楽知識では形容することができないし、あまりに圧倒されたのであまりきちんと覚えていない。イントロ(藤原さんのピアノ)に入るまでのアレンジと、二番のAメロにあたる部分のアレンジが素晴らしかった。音に圧倒されて、「ひえええーー!!!」と思わず叫んでしまった。大慌てである。自分が予想していた「すごい」を遥かに超える「すごいもの」が押し寄せてきて、感動という感情よりも驚きが上回ってしまう感じ。曲が、ライブが終わった後も、「あれはなんだったんだろう……!」と茫然としてしまったくらい、とにかくすごかった。すごいものを聞いた、という記憶に留めておくのも悪くはないし、あの会場でしか生まれ得なかった何か、もあるのだとは思うが、あればかりは本当に素晴らしかったので映像でぜひ見返したいし、多くの人に体感してもらいたい。そうでないともったいない。4月にSSTVで、2月の公演の様子が放映されるそうなので、そこで観られることを今はひたすら祈る……。

 

Pretender

 十分圧倒されたところでこの曲が来るのだから、本当に髭男というバンドのキャパシティは計り知れない。ちょうど二週間ほど前の紅白歌合戦でも披露された、今世の中で一番知られているであろう一曲。これは、ライブで、彼らが鳴らしているところを観られて本当に良かったと思った。

……明言は避けるが……紅白の際、髭男が出場を果たしたことに感慨深さを覚えつつも、ギターとベースのアンプにマイクが一本も立っていないことを少しさみしい気持ちで鑑賞していた。テレビではよくあることである。ただ、比べるわけではないのだが、King Gnuの井口さんがはじまる前、「おれたちはバンドの生音を バンドの持つ迫力を届けられたらと思う」とツイートし、本番でバチバチの生演奏で白日を披露していただけに、そのさみしさが余計に募ってしまった。(もちろん、冒頭のピアノや藤原さんの歌は素晴らしかったし、様々な事情があるのだろうけれど。)

――だからこそ、というのもおかしいが、とにかく、生音で聞くPretenderは沁みた。この曲の歌詞の主人公を思い描いたときに滲み出てくる無骨さのようなものが、良い意味で、その演奏にはあった。イントロのギターの、もう何千回と聞いているかわからないあのリフが、何かを語っているかのようにさえ聞こえる。打ち込みのサウンドと生ドラムが合わさる感じもとても良いし、ちゃんまつが両者をうまく操っている。サビで8分を刻む楢﨑さんのピック弾きが力強い。ライブで聴くPretenderは、力強い曲だった。 そしてここでも、高音/フェイクの名手、藤原氏にしてやられた。大サビ「甘いないやいや」が、「ドドーレドーレドーシラ」に。この日二回目の盛大な腰抜かし。終盤でこの攻撃力、頭を両手で抱える。

 

ラストソング

 本編ラストは、「ラストソング」で締めくくられた。「皮肉なもんだな こんな時だけ あっという間に過ぎ去るなんてさ」「今日が終わるのが悲しいから」……歌詞がそのまま、その場にいた全員の気持ちを代弁している。本当に、体感時間が短かった。この曲が本編もしくはアンコールの最後に来るであろうことはなんとなく予想できていたので、イントロが流れ出した瞬間、もう終わりなのかと驚いた。しかし、こうして振り返ってみてわかることだが、十分すぎるくらいの曲数とボリュームである。本当に、楽しい時間はあっという間に過ぎ去ったのだ。名手・藤原氏は、最後の「もっと歌いたいのにな」を一オクターブ上で歌い、さらにはアウトロの「ラララ」はハモリパートで聞かせる。
 本編の終わり方の演出は大変粋なものだった。文字通り、幕が下されたのである。「ラララ」のアウトロが続く中、ゆっくりと赤い幕が降下開始。いよいよ下まで降りてき、演奏の最後の音が「ジャンッ」と鳴らされたと同時に、赤い幕の上に照らし出されたのはTravelersの白い文字!これにはやられた!演出チーム、すごい。音が鳴り続けている中でメンバーたちが見えなくなっていくのはちょっと惜しいなあ……などと案じていたのだが、すべてはこのための準備だったのか。

 ちなみに、赤い幕にTravelersの白い文字が照らされた状態の写真は、以下のSpotifyのプレイリストのサムネイルになっている。

open.spotify.com
 本編が終了し、ひとまず着席。悲しきにかな、年を感じる瞬間。手拍子で呼びこんで、アンコールへ。

 

アンコール

 ツイッターで見かけた情報によると、Hall Travelersのツアー中、アンコールの曲目は日によって変えていたらしい。他の公演で「愛なんだが…」を演奏したというネタバレツイートをチラ見していたため、もしや聞けるのでは!?と期待していたのだが、この日は聞けず。いつかまた、聞けるのを楽しみにしておく。
 

日曜日のラブレター

 この日のアンコール一曲目は、「日曜日のラブレター」。これも大好きな曲なのでもちろんうれしい。前述のツイッター情報によれば、公演日が日曜日のセトリにはこの曲が組み込まれていたそう。粋だ……。日曜日の夕方、髭男のライブをその場にいるお客さんと一緒に楽しめているという幸せを改めて感じさせてくれる。藤原さんをはじめ、大輔くんも楢﨑さんもかなりステージの左右へと動き回っていたような気がする。アウトロで、藤原さんが「ラブレター書いた 書いた 書いたーーー」とフェイク(?)するところがあるが、そこでハモるのに備えて、持ち場を離れていた楢﨑さんが慌てて自分のマイクの前に戻っていったのを確認した。(でもこの日、藤原さんはそのフェイクをやらなかったのだが。)

 

異端なスター

 何を隠そう、私が最初に髭男に衝撃を受けたのはこの曲。そのときの衝撃は今も消えないし、きっとこれまでもこれからも、オンリーワンな曲でありつづけると思う。ライブでの定番曲、と聞いてはいたものの、聞けたことが嬉しくて感無量。曲の始まりも豪華なアレンジ。音源ではトイピアノで奏でられているメロディが、壮大に演奏され、全員がコーラスを重ねる。藤原さんが主旋律に対してハモっていた音が、全て、「大正解!」な音の動きで(音程があっているという意味ではなく、このコードならこの音鳴らしてほしい、と(私が個人的に)思う音が見事に鳴っていたということ)、イントロだけでだいぶ満足させられた。
 このライブがあった時、私は現実の生活で大変不甲斐ない日々を送っていただけに、藤原さんの声にのる歌詞がぐさぐさと刺さってしょうがなかった。いろんな感情が溢れ出して、思わず目から流れ出す水が止まらない。でも、聞けて良かった。本当に良かった。
 ブリッジの部分(2サビあと)では、楢﨑さんと大輔くん、藤原さんが真ん中のお立ち台に一度に乗ってソロを魅せる。落ちBメロに入ると、藤原さんをお立ち台に残して二人はステージに下りてしゃがみ、藤原さんをあがめるような仕草を見せていて、大変微笑ましかった。そして、本当の本当に最後の一曲へ。

 

宿命

 Pretenderについて思ったのと同様に、宿命もまた、ライブ演奏を聞くことで曲の本領が発揮されることを特に痛感させられる曲なのだと気づかされた。なによりベースの響き方である。この曲で楢﨑さんは5弦ベースとシンセベースを使い分け、スラップ奏法でリズミカルな音が心地良いBメロと、低く重たい音を響かせるサビなど、一曲の中でも違う表情を見せているのだが、このシンセベースがすごかった。パシフィコ横浜に響き渡る低音!さながら、地響き。そしてその地響きを司るは、楢﨑氏。この地響きを土台に重ね、奏でられていく宿命の、ライブでしか体感できない音圧。これはかなり癖になった。最後の最後まで全力のパフォーマンス、そして劣ることのない藤原さんの声。圧巻の締めくくりだった。

 

 終わった時にはもう、はやく次のライブが観たかった。それと同時に、体感したばかりの初ライブの余韻にいつまでも浸っていたかった。SEで日曜日のラブレターが流れ出し、挨拶をするメンバーたち。全員が手をつないで一列に並び、お辞儀をしたまま曲に合わせて前後に動いているお茶目なところもみせてくれたり、ラババンを客席に投げたり、手を振ったり、最後まであったかい。「またライブで会いましょう!」の言葉を実現させる日を楽しみに、舞台袖に消えていく彼らを見送った。

 

エピローグ

 終演後、あれが良かったこれが良かったと、鼻歌交じりに交わす会話が途絶えなかった。その色濃い余韻はずっと続いているし、すでに二カ月が経った今も、思い出してはドキドキが蘇る。と同時に、あれは夢だったんじゃないか……とぼんやりしてしまう。大好きなアーティストに一番のめり込んでいる時期に、すぐにチケットを手に入れてライブに行けるという喜びを、髭男で味わえてしまうなんて。そして、期待していた通り、いやそれを大幅に上回る素晴らしいパフォーマンスを観られたなんて。やっぱりライブは最高だ。Official髭男dism、これからも目が離せない。

 

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あとがき

    自分のための記録として書き連ねた長すぎる三部作。もはや読まれることは期待していないのですが、もし、ここまで全部読んだという方が居るならば、表彰状を贈りたいくらいです(笑)。これ、全部で1万3000字くらいあります(笑)貴重なお時間を割いていただき大変恐縮です、ありがとうございます!!

    こうやって、思い出しながら書くことで記憶を整理できる感覚があったので、また書こうかなと。でも、ディテールを忘れて「すごかった……!」という漠然とした印象だけを携え続けるのも、悪くはないんだよな。ま、気楽に。